お茶碗を回して飲む

茶道をやっていると言うと、「お茶碗を回して飲むんですよね?」と、よく聞かれます。
茶道のことを全く知らないという方でも、「お茶碗を回して飲む」という動作は、何処かで見て知っているようです。
講師の立場上、お茶碗の回し方は説明します。

時計回り(右回り)に45度ずつ2回(計90度)回して飲み、飲み終わったら反時計回り(左回り)に45度ずつ2回(計90度)回して、お茶碗を元の向きに戻す。

これはあくまで表千家の流儀です、とお断りしています。
元々は、お抹茶を飲むのにお茶碗を回さないで飲むのが普通だったからです。

歴史的には、絵の描いてあるお茶碗の場合に、飲み口で正面の絵を汚さないように回したのが始まりでした。
それがいつのまにか、無地のお茶碗でも何でも回して、全ての正面を外して飲むようになったのです。

ところが、お茶碗を回さなかった頃の作法を現代に残している流派があります。
松尾流です。
松尾流では、お茶碗の一番良い所から飲むため、お客には茶碗の正面を向けてお出しし、お客もそのまま回さずに飲みます。
そういう伝統的な作法が存在している以上、飲み方の何が絶対に正しいということはなく、それぞれの考え方、流儀の違いということになります。
つまり、茶道をやっていない人は、本当は、どのようにお抹茶を飲んでも構わないのです。

但し、飲み終わったお茶碗が戻った時、飲み口が右(時計の3時の方向)にあると、亭主が飲み口の汚れを落としやすい(お湯を飲み口の側から捨てる)という合理的な理由はあります。
しかし、それは茶道をやっていて、お点前を知っている者がやるべき気遣いです。
一般の方にそこまで気を遣わせるとしたら、そのお茶席はおもてなしとは言えないような気がします。

それにしても、どうしてお茶碗を回して飲むという動作が広く知られるようになったのでしょう?
多くの人にとって、意味もわからずに。

ここからは、私個人の推理です。
お茶碗を回すというパフォーマンスが、ひと手間かけてお抹茶を美味しく飲むという潜在的なイメージに結びついたのではないでしょうか。
実は、スピンエネルギーというものがあります。
時計回りに氣が流れると、食べ物でも飲み物でも美味しくなります。
偶然かも知れませんが、お茶を点てる時、茶筅を時計回りに振ります。
「美味しくなれ」と、無意識にパワーを注入しているのです。

そして、飲む時にお茶碗を回すと、何となくお客もパワーを注入しているような気がしませんか?

この、何となくの感覚がしっくりきて、お茶碗を回して飲むという動作が有名になったのではないかと考えています。

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