茶の湯と「氣」

気功について、「いかがわしい」「信じられない」「宗教じゃないか」と否定的な人は多いです。
自分の目には見えない、感じないものを話す人間に、「気持ち悪い」と不快に感じるようです。
私も面と向かって言われます。
茶道の先輩に、「ヒーラーと言うのはやめなさい。茶人と名乗りなさい」と注意されたこともあります。

実は、茶の湯も、目に見えない「氣」というエネルギーを扱っています。

表千家十三代家元、即中斎(1901-1979)の著書に、『即中茶記』があります。
その中に「氣」について書かれている箇所があります。
以下、引用です。

風爐の時だけ、お茶をたてる前に、水を一杓釜へさします。爐では致しません。これは熱いお湯をぬるくするといふ意味ではなしに、お湯の氣をたるめるといひますか、弱めるといふ意味です。事は使ふお茶そのものに關します。
お茶は毎年五月に摘みます。摘みますと、すぐ葉茶に致します。これを茶壺に詰め、一ト夏も越し、秋も過ぎ、冬(舊暦)に至りますと、始めて新茶を茶臼で挽いて用ひます。
新茶を五月に直ぐ挽いてのみますと、色は青くていいのですが、味は青くさくお茶のうま味がありません。それで密閉して約半年すぎますと、色もよく、味もお茶のうま味が充分出ます。
かうして翌年の秋までは、昨年製したお茶を使ふことになります。それで風爐の時節は、お茶としては古茶といふことになります。古茶となれば、お茶の氣も弱って居りますから、お湯もそれに相應して、お茶をたてる前に一杓水をいれて、お湯の氣をたゆめる次第であります。
かくして風爐の濃茶には、お茶をたてる前に水一杓を必ず釜にさします。

引用は以上。(一部、旧字体を新字体に改めました)

要は、風炉の時期(5~10月)、お抹茶は古くなっているので、氣が衰えている。
お湯の氣に負けてしまうので、水でお湯の氣を弱めて、お抹茶とお湯の氣のバランスを良くする、ということです。

正に、目に見えないエネルギーの話なのです。
ただ、そのように理解している人は少ないかも知れません。

「夏の暑い時に、熱いお茶を飲むのは大変だから、水でお湯の温度を下げて、飲みやすくする」
と、説明されることが多いように感じます。

どうして、このような誤解が広まったのでしょうか?

多分、お抹茶の製造技術が進歩したせいだと思います。
昔と比べてお抹茶の保存状態が良くなり、一年中美味しく飲むことができるようになりました。
そのため、現代の茶の湯は、お抹茶の状態をあまり気にする必要がなくなったのです。
せいぜい、お抹茶の缶が開封後何日かを考えるぐらいでしょう。

ところで、お抹茶は、茶筅さえあればテーブルでも点てられます。
「ポットのお湯を入れて、家でもお抹茶を飲むけど、なぜかお茶席で飲む方が美味しく感じる。」
そういう話をよく耳にします。
もし「氣」について考えてみたら、答は見つかるかも知れません。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です