母が見た夢
先日、母が、変な夢を見たと言いました。
夢の中で男性が訪ねてきたそうです。
「どなたですか?」と母が尋ねると、
その男性は「厚です」と答えました。
厚先生とは、私の最初の師匠、故 松下宗厚先生のことです。
「夢に、厚先生が出たんだよ」
母はとても不思議がっていました。
私から話には聞いていても、厚先生本人とは一度も会ったことがありません。
しかもとっくに亡くなっているので、厚先生の存在自体を忘れていたぐらいなのです。
実は、母以上に、驚いたのは私でした。
母が夢を見た2日前、厚先生の13回忌の連絡がありました。
今まで不義理を重ねていたので、10年ぶりにお墓参りに参加することにしました。
その出欠をメール返信した直後に、母は厚先生の夢を見たのです。
母にはお墓参りのことをまだ話していませんでした。
厚先生の霊が訪ねてきた……とは思いません。
私が厚先生について思ったことの何かが、母に伝わったのだと思います。
一種のテレパシーです。
実は、以前にも、母から不思議な話を聞いたことがあります。
ある時、父が2階の母の部屋に入ってきました。
父の顔を見て、母は大変びっくりしたそうです。
墨を塗ったように顔が真っ黒だったからです。
父は何も言わずに、また母の部屋を出て行きました。
母は、一体何があったんだろうと思いました。
真っ黒な顔が気になって仕方がありません。
理由を確かめに、1階へ降りました。
父はいつも通り、普通の顔に戻っていました。
「さっき、私の部屋へ来たでしょう?」
「行かない」
父はずっと自分の部屋にいたそうです。
あれは夢だったのかな?
それにしては、生々しい夢だった。
母は見た夢をすぐに忘れますが、この夢だけは今も忘れません。
真っ黒な顔の夢を見てから、しばらくして、父は髄膜炎(脳に菌が入った)で入院しました。
そして、数ヶ月後に父は亡くなりました。
夢と髄膜炎は関係があったのか、本当のところはわかりません。
しかし、父の何か異状を感じ取って、母はそんな夢を見たような気がするのです。