鬼才サンジュナの芸
浅草の東洋館に行きました。
「東京演芸協会 お笑い大行進」。
漫談やマジック、演歌まで何でもありのイロモノの寄席で、芸人たちが個性的な芸を披露して、客を楽しませてくれます。
その中で一際異彩を放つのは、サンジュナさん。
水も滴る、妖艶な美女です。
驚くべきは、寄席でお決まりの客席とのコミュニケーションがありません。
司会の紹介では、一人芝居、独歩劇場という前説。
わずか10分の持ち時間で、三部構成になっていました。
第一部。
いきなり大音響の曲とノイズが流れ、傘と、能面のような仮面で素顔を隠し、登場します。
そして、ロックなノリで踊り、カオスな世の中を憂い、叫びます。
寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』を彷彿とさせるような、熱い思い。
そのメッセージは客席を超えて、日本全土を地続きにします。
第二部。
素早く着替えをして、素顔で再登場。
純白の衣装に身を包み、雅に躍り、唄います。
曲は、まず童謡の「赤とんぼ」。
次に韓国の古い民謡「アリラン」。
この2曲は、全く同じメロディーではないかと思ってしまうほど、そっくりです。
最後に、録音されている「赤とんぼ」の歌声に重ねて、「アリラン」を生で唄いました。
無関係な2曲が、コード進行は同じという奇跡。
まるで次元を超えるような感覚を覚えました。
日本と韓国。
言葉は違っても、同じDNAを持った、同じ人間なのです。
国家という枠組みを超えて、それぞれの過去の思い…憎しみも悲しみも浄化されて行くような、心地好いシーンでした。
第三部。
再び衣装を替えて登場。
これまでの行き掛かりを脱ぎ捨てるように、露出度の高いランジェリー風です。
椎名林檎の『NIPPON』が流れ、日の丸を連想させる白と赤を基調にしたSEXY衣装で、両手に日本の国旗を持って、日本にエール。
退場の寸前に一言だけ挨拶して、サンジュナさんの一人芝居は終わりました。
安倍がどうの、コロナがどうの、そういうありきたりの話題でお茶を濁すことなく、
もっと高い志で、この国を元気にしたいという舞踏パフォーマンスに、圧倒されました。
歌声、メロディー、ノイズ、様々な音が交錯し、イメージとして最後に残るのは、勇気、そして希望。
それを、小柄のサンジュナさんが世界に向けて発信している姿に、生命力を感じ、感動を覚えるのです。
観る人の心の深い所に届き、元気にさせるパフォーマンスでした。
以上は、私が観て感じたことです。
サンジュナさんご本人の意図とは違っているかも知れません。
もし興味を覚えた方がいましたら、東洋館にぜひ足を運んでいただきたいです。
東京演芸協会は、偶数月に東洋館にご出演されます。